2025年3月26日水曜日
韓国の自殺率
韓国の自殺率は、国際的に見ても非常に高い水準にあり、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で長年トップを維持しています。以下に、現在のデータとその傾向を解説します。
### 韓国の自殺率の現状
2022年の統計によると、韓国の自殺率は人口10万人あたり25.2人でした。これはOECD平均(約11人程度)の2倍以上であり、他の先進国と比較しても突出しています。例えば、日本の自殺率は同年で約15.4人、ドイツは9.7人と、韓国が極めて高いことがわかります。年間の自殺者数は約13,000〜14,000人に上り、1日平均で約38人が命を絶っている計算になります。この数字は、韓国社会が抱える深刻な課題を映し出しています。
### 自殺率の推移
韓国の自殺率は、1980年代までは比較的低く、日本の半分程度(10万人あたり10人以下)でした。しかし、1997〜1998年のアジア通貨危機をきっかけに急上昇し始め、2000年代初頭から2011年頃にかけてピークを迎えました。2011年には10万人あたり31.7人と、OECD内で最も高い水準に達しました。その後、政府の自殺予防政策(後述)の影響もあり、2010年代中盤から若干の減少傾向が見られましたが、2018年以降再び上昇し、2020年代も高い水準が続いています。特に2022年は14,439人と、2011年以来の最多を記録しました。
### 年齢・性別による傾向
- **年齢層**: 自殺率は年齢が上がるほど高くなる傾向があります。特に80歳以上の高齢者で顕著で、2022年のデータでは10万人あたり60.6人と、他の年齢層を大きく上回ります。一方で、若年層(10〜24歳)でも自殺が主要な死因となっており、10代の自殺率は2010年代以降増加傾向にあります。例えば、10〜14歳の少女の自殺率は2017年の1.2人から2022年には3.2人と約3倍に跳ね上がりました。
- **性別**: 男性の自殺率は女性の約2倍で、2022年では男性が35.2人、女性が15.1人でした。ただし、自殺未遂数は女性の方が多く、男性はより致死性の高い方法(例: 首吊り)を選択する傾向があるため、死亡に至るケースが多いとされています。
### 自殺方法の変化
2000年代初頭までは農薬による自毒が主流でしたが、2011年に致死性の高い除草剤パラコートの製造が禁止され、これによる自殺が減少しました。代わって、首吊りが最も一般的な方法となり、2019〜2021年の女性の自殺では約46.9%を占めています。また、近年は一酸化炭素中毒(練炭使用)や高所からの飛び降りが増加傾向にあり、特に若年層で飛び降りが目立ちます(10〜19歳の56%がこの方法)。
### 背景と要因
韓国の高い自殺率には、複数の社会的・文化的要因が絡んでいます。
1. **経済的圧力**: 1997年の通貨危機以降、失業率の上昇や非正規雇用の増加が続き、特に高齢者の貧困率はOECD内でトップクラス(2021年で39%超)。経済的困窮が自殺の大きな要因となっています。
2. **競争社会**: 教育や就職における熾烈な競争が若年層に強いストレスを与えています。大学進学率は約70%と高いものの、正規雇用に就けるのはその一部に限られ、学歴社会のプレッシャーが精神的な負担に。
3. **社会的な孤立**: 急速な近代化で家族構造が変化し、伝統的な儒教的サポートが弱まる一方、個人主義が浸透。高齢者や若者の孤立感が増しています。
4. **メンタルヘルスのタブー**: 精神疾患へのスティグマが根強く、2021年の調査では精神障害者のうちわずか7.2%しか専門サービスを利用していませんでした。うつ病治療薬の処方率もOECD内で下から3番目です。
### 政府の対策とその効果
韓国政府は2004年から自殺予防に取り組み始め、2011年に「自殺予防法」を制定。これにより、全国に自殺予防センターが設置され、2013年から2014年にかけて自殺率が4.1%減少(28.5人→27.3人)するなど一定の成果を上げました。2023〜2027年の目標では、自殺率を30%削減する計画が掲げられており、メンタルヘルス検診の頻度を10年から2年に短縮するなどの施策が進行中です。しかし、予算やデータの不足、地方への支援の偏りが課題とされ、TIME誌(2024年)の調査では、現行の計画達成は困難との声も上がっています。
### 結論
韓国の自殺率は、経済危機を契機に急上昇し、その後も高い水準を維持しています。高齢者の貧困、若者の競争圧力、社会的孤立が主な要因で、性別や年齢層で異なる傾向が見られます。政府の対策は一定の効果を上げつつも、根深い文化的・構造的問題への対応が求められており、今後の動向が注目されます。
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